イベント民泊開催の要件と届出方法|自治体要請に応じた特例制度

民泊
「イベントの期間だけ、自宅を旅行者に提供したい」

そんな場合に知っておきたいのがイベント民泊です。

イベント民泊は、通常の住宅宿泊事業法による民泊とは仕組みが異なり、開催地の自治体が必要性を判断し、自宅提供者に要請することによって実施される制度です。

この記事の結論
イベント民泊は、誰でも自由に始められる制度ではありません。自治体がイベントの宿泊需要や地域との交流などを踏まえて実施を判断し、自宅提供希望者を募集・審査したうえで要請する仕組みです。

「イベント民泊をやりたい」という相談

相談者:
「近所で大きなお祭りが開催される予定です。ホテルが足りなくなるという話も聞いています。自宅の空いている部屋を旅行者に提供して、宿泊料を受け取ることはできますか?」
行政書士:
「通常の民泊として営業するのであれば、旅館業法の許可や住宅宿泊事業法の届出など、制度に応じた手続きが必要です。ただし、一定の条件を満たすイベントで、自治体がイベント民泊として実施を判断し、自宅提供を要請する場合があります。」
相談者:
「では、自分で保健所にイベント民泊の届出を出せばいいのでしょうか?」
行政書士:
「そこが大切なポイントです。イベント民泊では、通常の住宅宿泊事業の届出を自分で行うという仕組みではありません。まず、開催地の自治体がイベント民泊を実施するかどうかを判断します。」

この違いを知らないまま「民泊だから住宅宿泊事業の届出をすればいい」と考えてしまうと、手続きの方向を間違える可能性があります。

イベント民泊とは何か

イベント民泊は、正式には「イベントホームステイ(イベント民泊)」と呼ばれています。

厚生労働省と観光庁のガイドラインでは、多数の旅行者が集まるイベントなどで、宿泊施設の不足が見込まれる場合や、ホームステイを通じて地域住民と旅行者の交流を生み出す地方創生の観点から、開催地の自治体の要請等により自宅を提供する仕組みとして整理されています。

通常の旅館業のように、継続的な宿泊営業をするものではありません。

そのため、一定の要件を満たすイベント民泊については、旅館業法上の「営業」に当たらないものとして扱われ、旅館業の営業許可を受けずに宿泊サービスを提供できる場合があります。

ここで注意
「イベントの期間なら、誰でも無許可で民泊できる」という意味ではありません。自治体の判断・要請など、イベント民泊としての仕組みが必要です。

イベント民泊が認められる主な条件

① イベント開催時であること

イベント民泊は、通常の民泊営業とは違い、イベント開催をきっかけとして実施されるものです。

ガイドラインでは、年数回程度、1回当たり2~3日程度のイベント開催時という考え方が示されています。

ただし、ここは「必ず3日以内」という単純なルールではありません。

厚生労働省の資料では、イベント期間が4日を超える場合でも、宿泊者が入れ替わるかどうかなどを踏まえて、反復継続性がないと判断されるケースがあり得るとされています。したがって、日数だけで一律に判断することはできません。

② 宿泊施設の不足など、イベント民泊の必要性があること

イベント民泊が検討される代表的なケースは、イベントによって多数の来場者が見込まれ、周辺の宿泊施設だけでは宿泊需要を満たせない場合です。

自治体は、イベントの来場者数や周辺の宿泊施設の供給状況などを踏まえ、宿泊施設が不足するかどうかを判断します。

なお、宿泊施設不足だけが入口ではありません。

2019年のガイドライン改訂では、ホームステイでの宿泊体験を通して地域住民と旅行者の交流を生み出す地方創生の観点もイベント民泊の要件として追加されています。

③ 開催地の自治体による判断・要請があること

ここがイベント民泊を理解するうえで最も重要な部分です。

イベント民泊を実施するかどうかは、イベント開催地の自治体が判断します。

ガイドラインでは、イベント民泊の実施について国や都道府県に申請する仕組みではないことが明記されています。自治体の観光担当部署、旅館業法担当部署、必要に応じて警察・消防などが連携して進めます。

覚えておきたい一言
イベント民泊は「自分で勝手に始める民泊」ではなく、「自治体が必要性を判断し、その枠組みの中で自宅を提供する仕組み」です。

イベント民泊の「届出方法」は通常の民泊と違う

今回のタイトルには「届出方法」とありますが、ここは通常の住宅宿泊事業と区別して考える必要があります。

住宅宿泊事業の場合

住宅宿泊事業法に基づく民泊では、住宅宿泊事業者が必要な書類を準備して、都道府県等へ届出を行います。

一方、イベント民泊では、自治体がイベント民泊の実施を判断し、自宅提供希望者を募集し、申込者を審査したうえで、要請するという流れが基本です。

項目 住宅宿泊事業 イベント民泊
基本的な仕組み 住宅宿泊事業法に基づく届出 自治体が実施を判断
開始のきっかけ 事業者自身が制度を利用 イベントに伴う自治体の判断・要請
営業の性質 制度上の住宅宿泊事業 イベント時の一時的な自宅提供
自治体との関係 届出・監督等 公募・審査・要請・安全管理等

つまり、イベント民泊を希望する人は、まず開催地の自治体にイベント民泊の実施予定があるかを確認することが第一歩です。

自治体ではどのような流れで進めるのか

厚生労働省・観光庁のガイドラインには、自治体向けの作業フローも示されています。

ステップ1 自治体が必要性を判断

イベントの来場者数、過去の実績、周辺の宿泊施設の供給量などを確認します。

また、地域住民と旅行者との交流を生み出す地方創生の観点から、イベント民泊の必要性を判断することもあります。

ステップ2 関係部署と事前相談

自治体の観光担当部署だけで判断するのではありません。

旅館業法を担当する部署、必要に応じて警察署や消防署などとも事前に相談し、イベント民泊を実施するかどうかを自治体として決定します。

ステップ3 自宅提供希望者を募集

自治体はホームページや広報誌などを使って、自宅提供希望者を募集します。

応募者には申込書を提出してもらい、自治体が募集要件を満たしているか確認します。

ステップ4 申込者を審査

申込書を確認したうえで、実際に要請する自宅提供者を決定します。

ステップ5 自治体から要請

対象者に対して、イベント民泊への協力を要請します。

このように、自治体の要請が重要な位置を占めています。

ステップ6 研修・注意事項の確認

自治体は、自宅提供者に対して研修を行ったり、ホームページや書面で注意事項を案内したりします。

ステップ7 イベント期間中の対応

苦情受付窓口を設け、トラブルが発生した場合に自治体や関係機関が対応できる体制を整えることが求められています。

ステップ8 実施結果を確認

イベント終了後は、自宅提供者へのアンケートなどによって実施状況を把握します。

自治体によって実際の募集方法・書類・期間は異なります。
イベント民泊を希望する場合は、まず開催地の自治体が公表している募集要項や担当窓口を確認しましょう。

自宅提供者が事前に確認しておきたいこと

「自治体から募集があったから申し込めば大丈夫」と考えるのではなく、自分の住宅についても確認が必要です。

賃貸住宅なら契約を確認

賃貸住宅の場合、そもそも自宅を旅行者に提供できる契約になっているか確認する必要があります。

ガイドラインでも、賃貸物件については又貸しが禁止されていないかなど、旅行者に貸し出す権原を確認することが示されています。

設備を確認

旅行者が利用できるシャワー、トイレ、洗面設備などがあるか、清潔な環境を維持できるかも確認します。

近隣への影響を考える

旅行者を受け入れることで、同じ建物の住民や近隣住民に不利益が生じないかも重要です。

特に騒音やゴミの処理方法については、宿泊者に事前に説明するなどの対応が求められています。

本人確認などの方法を決める

予約受付の際には、宿泊者の氏名、住所、国籍などを確認することが望ましいとされています。

日本国外に在住する外国人については、旅券番号の確認も望ましいとされています。また、チェックイン・チェックアウト時にも本人確認を行うことが望ましいとされています。

イベント民泊でも「安全対策」は必要

イベント民泊は旅館業の営業許可を受けずに実施できる場合がありますが、だからといって安全面の準備が不要になるわけではありません。

宿泊者の安全、近隣住民とのトラブル防止、衛生面、災害時の避難などについて、自治体の案内に従って準備する必要があります。

ガイドラインでは、災害時の避難場所などを宿泊者に情報提供することも望ましいとされています。

また、自宅提供者に対して、イベント民泊に起因する第三者への損害を補償できる損害保険への加入を勧めることも、自治体に求められています。

「許可不要=何をしてもよい」ではありません。
イベント民泊は、自治体の要請と安全・衛生・トラブル防止の仕組みを前提とした制度です。

行政書士に相談するときのポイント

イベント民泊について行政書士に相談する場合、最初から「届出書を作ってください」と依頼するより、まず自分の地域でイベント民泊が実施される予定があるのかを確認することが大切です。

そのうえで、次のような点を整理して相談すると話が進みやすくなります。

  • イベントの名称と開催場所
  • イベントの開催期間
  • 自宅の所在地
  • 自己所有か賃貸か
  • 提供したい部屋や住宅の状況
  • 自治体から募集・要請などの案内を受けているか
  • 宿泊者の募集方法
  • 近隣住民への対応
  • 消防・衛生面について自治体から指示されている内容

特に、自治体からすでに公募書や申込書、要請書などが示されている場合は、それらを持参すると確認しやすくなります。

相談前に「自治体から何を言われているのか」を整理しておく。
これだけでも、必要な手続きや確認事項を整理しやすくなります。

イベント民泊と通常の民泊を混同しない

最後に、今回の記事で一番覚えておいてほしいところを整理します。

確認すること ポイント
イベント民泊か 自治体がイベント民泊として実施を判断しているか
通常の住宅宿泊事業か 住宅宿泊事業法に基づく届出が必要になるか
旅館業か 継続的な宿泊営業として旅館業法の許可が必要か
賃貸住宅か 賃貸借契約上、旅行者への提供が可能か
地域独自のルール 自治体の条例・募集条件などを確認する

民泊という言葉だけを見ると、すべて同じ制度に思えてしまいます。

しかし、実際には旅館業、住宅宿泊事業、特区民泊、イベント民泊など、それぞれ仕組みが違います。

観光庁の民泊制度ポータルサイトでも、イベント民泊について自治体の要請に基づいて自宅等を提供する仕組みとして案内されています。

まとめ|イベント民泊は「自治体の判断」がスタート

イベント民泊は、大きなイベントによる宿泊需要への対応や、地域住民と旅行者との交流などを目的として活用される仕組みです。

重要なのは、自宅の所有者が自由にイベント民泊を始める制度ではないということです。

まず自治体がイベント民泊の必要性を判断します。

その後、自宅提供希望者を募集し、申込者を確認・審査し、対象者に要請するという流れが基本になります。

また、通常の住宅宿泊事業とは違い、イベント民泊について国や都道府県へ通常の「民泊届出」をするという仕組みではありません。

確信の一言
イベント民泊を考えたら、まず「自分で届出をする」より先に、開催地の自治体がイベント民泊を実施するのかを確認する。ここから始めるのがポイントです。

公式情報・参考リンク

制度の詳細や最新情報は、次の公的機関の情報を確認してください。

なお、イベント民泊の具体的な募集方法、申込書、要請書、実施期間などは自治体によって異なる場合があります。

実際に利用を検討する場合は、開催地の自治体の最新情報を確認してください。

著者の一言

今回調べてみて、私が特に分かりにくいと感じたのは、「イベント民泊」という言葉から通常の民泊と同じような届出制度を想像してしまいやすいところです。

実際には、自治体がイベントの状況を確認し、関係部署と相談し、自宅提供者を募集するという流れがあります。

ですから、「大きなお祭りがあるから自宅を貸してみよう」と思った場合も、まず自治体に確認することが大切です。

制度を先に知っておけば、必要な準備も落ち着いて進められます。

次回予告

次回は、相談案件No.118です。

「農家民泊・農泊の手続きと要件|地域活性化に向けた許認可ガイド」を取り上げます。

農家の自宅や農村地域の施設を活用して旅行者を受け入れる「農泊」には、通常の民泊とは違った考え方があります。

どのような制度が関係し、どんな手続きが必要になるのかを整理します。

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イベント民泊を検討しているけれど、自分の地域で実施できるのか、自治体への確認や必要な手続きが分からないという場合は、行政書士への相談もご検討ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。