【2026年最新】一人親方の法人化で社会保険加入は必須?保険料のシミュレーション

法人化

一人親方が株式会社や合同会社を設立して法人化すると、原則として健康保険・厚生年金保険への加入が必要になります。

従業員を雇わず、社長一人で仕事をする会社であっても、社会保険の加入義務が生じる場合があります。

ただし、保険料は役員報酬や年齢などによって変わります。法人化を検討しているなら、設立費用だけでなく、毎月の社会保険料まで計算しておくことが大切です。

この記事のポイント

  • 一人会社でも社会保険への加入が原則必要
  • 保険料は役員報酬や年齢、加入する健康保険によって変わる
  • 会社負担分も含めて資金繰りを考える必要がある
  • 法人化によって年金や医療保険の仕組みも変わる

1.一人親方が法人化すると社会保険への加入は必須?

従業員がいない一人会社でも原則加入が必要

「従業員を雇っていないのだから、社会保険に入らなくてもよいのでは?」と考える一人親方もいるでしょう。

しかし、日本年金機構によると、株式会社などの法人事業所は、事業主だけの場合も含めて、原則として健康保険・厚生年金保険の適用対象です。

そのため、法人化して代表者が役員報酬を受け取り、会社の経営や業務に継続的に従事する場合は、社会保険への加入が必要になるのが基本です。

従業員が5人以上いるかどうかは、法人の加入義務を判断する基準ではありません。

詳しくは、日本年金機構の公式ページをご確認ください。

日本年金機構:法人化した場合の社会保険加入について

個人事業主のときとは何が違う?

個人事業主として一人親方を続ける場合と、法人化した場合では、加入する保険の仕組みが異なります。

比較項目 個人事業主 法人の代表者
医療保険 原則として国民健康保険など 原則として健康保険
年金 国民年金 厚生年金
保険料の負担 本人が負担 本人負担と会社負担に分かれる
保険料の計算 前年所得や世帯状況などで変動 原則として役員報酬などを基に計算

個人事業主の国民健康保険料は、自治体や前年所得、世帯の状況などによって異なります。一方、法人の健康保険・厚生年金保険料は、原則として標準報酬月額などを基に計算します。

そのため、法人化すれば必ず保険料が安くなる、あるいは必ず高くなるとは一概にいえません。現在の保険料と、法人化後の本人負担・会社負担の両方を比較する必要があります。

2.法人化すると加入する社会保険の種類

健康保険

法人の代表者が加入要件を満たす場合、原則として会社の健康保険に加入します。協会けんぽのほか、条件によっては健康保険組合などが選択肢になります。

健康保険では、病気やけがをしたときの医療給付などを受けられます。加入する制度や本人の条件によっては、傷病手当金などの給付対象になる場合もあります。

厚生年金保険

厚生年金保険に加入すると、国民年金に加えて厚生年金の仕組みが適用されます。将来受け取る年金額は、加入期間や報酬などによって変わります。

厚生年金保険料率は18.3%で、原則として会社と本人が半分ずつ負担します。健康保険料と合わせて、会社負担分も資金計画に含めておきましょう。

日本年金機構:厚生年金保険の保険料

40歳から64歳までは介護保険料も加わる

40歳から64歳までの人は、原則として健康保険料に介護保険料が加わります。同じ役員報酬であっても、年齢によって本人負担額が異なるため注意が必要です。

また、2026年度は子ども・子育て支援金制度の保険料も確認が必要です。以下の試算では、2026年4月分からの支援金率も含めています。

3.【2026年度】一人親方の社会保険料シミュレーション

ここでは、神奈川県で協会けんぽに加入する法人の代表者を例に、役員報酬ごとの社会保険料を試算します。

試算の前提条件

  • 2026年度の協会けんぽ神奈川支部の保険料額表を使用
  • 健康保険料率:9.92%
  • 介護保険料率:1.62%(40歳から64歳まで)
  • 子ども・子育て支援金率:0.23%
  • 厚生年金保険料率:18.3%
  • 役員報酬と標準報酬月額が一致する等級を例示

実際の保険料は標準報酬月額の等級、年齢、加入先、保険料の適用月などによって変わります。以下は制度を理解するための概算です。

役員報酬20万円の場合

役員報酬が月20万円の場合、標準報酬月額20万円の等級を使って計算すると、本人負担の目安は次のとおりです。

保険の種類 40歳未満・65歳以上 40~64歳
健康保険 9,920円 9,920円
介護保険 対象外 1,620円
子ども・子育て支援金 230円 230円
厚生年金 18,300円 18,300円
本人負担の合計 28,450円 30,070円

このほか、会社側も原則として同程度の健康保険料・支援金・厚生年金保険料を負担します。さらに、会社だけが負担する子ども・子育て拠出金などもあります。

役員報酬20万円の場合、会社負担は上記の前提では月約29,170円(40歳未満・65歳以上)、月約30,790円(40~64歳)が目安です。

したがって、本人負担だけでなく、会社側の負担も合わせて考えることが重要です。

役員報酬30万円の場合

役員報酬が月30万円の場合、標準報酬月額30万円の等級を使った本人負担の目安は次のとおりです。

保険の種類 40歳未満・65歳以上 40~64歳
健康保険 14,880円 14,880円
介護保険 対象外 2,430円
子ども・子育て支援金 345円 345円
厚生年金 27,450円 27,450円
本人負担の合計 42,675円 45,105円

会社側の負担は、上記の前提では月約43,755円(40歳未満・65歳以上)、月約46,185円(40~64歳)が目安です。

役員報酬が高くなると、本人の手取りだけでなく、会社が負担する社会保険料も増える傾向があります。法人化の前に、役員報酬をいくらに設定するかを検討しましょう。

協会けんぽ:令和8年度保険料額表

試算上の注意点

上記の金額は、2026年度の協会けんぽ神奈川支部の料率を基にした概算です。賞与、標準報酬月額の等級、加入先の健康保険、適用月などによって実際の金額は異なります。また、会社負担には子ども・子育て拠出金などが加わります。正式な金額は、加入する健康保険の保険料額表や年金事務所で確認してください。

4.法人化後の社会保険料を考えるときの注意点

本人負担だけでなく会社負担も計算する

法人化を検討するとき、役員報酬から差し引かれる本人負担だけを見てしまいがちです。しかし、会社も保険料を負担するため、会社の資金繰りにはその分の支出が発生します。

たとえば、役員報酬を月20万円に設定する場合、本人負担と会社負担を合わせると、社会保険料等の負担は月約5万8,000円から約6万2,000円が一つの目安になります。会社だけが負担する拠出金も含めた試算です。

実際には、法人住民税、税理士報酬、決算費用、登記費用なども発生するため、社会保険料だけで法人化の損得を判断しないようにしましょう。

役員報酬は慎重に決める

役員報酬は、社会保険料だけでなく、法人税や所得税、住民税、会社に残す資金にも関係します。

報酬を低く設定すれば保険料を抑えられる場合がありますが、生活費が足りなくなる可能性もあります。逆に報酬を高く設定すると、手取りが増えても社会保険料の負担が大きくなることがあります。

会社の売上や利益、生活費、税金、将来の年金などを総合的に考えて設定することが大切です。

社会保険料を下げる目的だけの法人化には注意

法人化して役員報酬を設定すれば、必ず社会保険料を大幅に削減できるわけではありません。

2026年には、個人事業主などを法人役員にするケースについて、役員としての業務実態や報酬の支払い実態を踏まえて被保険者資格を判断する取扱いが明確化されています。

形式上だけ役員になり、実際の業務や報酬の実態が伴わない場合など、加入資格が認められない可能性もあります。社会保険料の削減だけを目的にした不自然な仕組みは避け、実態に合った法人運営を行いましょう。

厚生労働省:法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて

5.一人親方が法人化する前に確認したいこと

法人化を決める前に、次の項目を確認しておくと、設立後の資金不足を防ぎやすくなります。

  • 現在の国民健康保険料と国民年金保険料はいくらか
  • 法人化後の役員報酬をいくらにするか
  • 本人負担と会社負担を合わせた社会保険料はいくらか
  • 法人の税金や決算費用などを支払えるか
  • 建設業許可や取引先との契約に影響がないか
  • 厚生年金加入による将来の年金額の変化も考慮したか

社会保険料は毎月発生する固定的な支出です。売上が少ない月でも支払えるかどうか、余裕を持った資金計画を立てましょう。

6.法人化と社会保険の手続きは専門家に相談しよう

法人化に伴う手続きには、会社設立の登記、税務署への届出、社会保険の加入手続きなどがあります。それぞれ担当する専門家や窓口が異なります。

  • 行政書士:建設業許可などの許認可手続きについて相談
  • 司法書士:会社設立の登記手続き
  • 社会保険労務士:社会保険の加入手続きや労務管理
  • 税理士:法人税、役員報酬、税務申告など

建設業許可を持つ一人親方が法人化する場合は、社会保険だけでなく、許可の承継や新規申請が必要になるかどうかも確認が必要です。
法人化の予定日が決まったら、関係する手続きを早めに整理しておきましょう。

まとめ:社会保険料を把握してから法人化を判断しよう

一人親方が法人化すると、従業員を雇っていなくても、原則として健康保険・厚生年金保険への加入が必要です。

保険料は役員報酬や年齢、加入する健康保険によって変わります。本人負担だけでなく、会社負担分や法人運営に必要な費用も含めて検討することが大切です。

法人化によって社会保険の仕組みや将来の年金も変わるため、目先の保険料だけで判断せず、事業と生活の両面からシミュレーションしましょう。

著者の一言

法人化を考えるときは、会社を設立する費用だけでなく、設立した後に毎月いくら必要になるのかを知っておくことが大切です。

特に社会保険料は継続して発生するため、売上が安定していない時期ほど慎重な計画が欠かせません。数字を確認しながら、自分に合ったタイミングを考えていきましょう。

次回予告

次回は、相談案件No.8「建設業許可の『経営業務の管理責任者(経管)』要件を一人親方がクリアする方法」を解説します。

建設業許可を取得するうえで重要な経営経験の要件や、証明する際の注意点を分かりやすく紹介します。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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