マンションで民泊を始めたいと思ったら、最初に確認したいのが「そのマンションで民泊が認められているか」です。
住宅宿泊事業法の届出ができる物件でも、マンションの管理規約で民泊が禁止されていれば、そのまま始めることはできません。
今回は、前回の記事で紹介した民泊の制度選びから一歩進んで、マンションで民泊を始める場合に特に重要となる「管理規約の確認」について分かりやすく解説します。
今回の相談事例
60代の男性から、次のような相談がありました。
この相談で最初に確認したいのが、マンションの管理規約です。
マンションでは、区分所有者が自由に使える専有部分であっても、共同生活を維持するための一定のルールがあります。
国土交通省も、マンションで適法に民泊を行うためには、管理規約で民泊を禁止していないことが必要と案内しています。
つまり、「自分が所有している部屋だから民泊できる」とは限らないのです。
マンションで民泊はできるのか?
結論からいうと、マンションでも民泊を行える場合があります。
ただし、住宅宿泊事業法などの制度上の条件だけで判断することはできません。
まず確認するのは、次の3点です。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| ① 管理規約 | 民泊を禁止していないか |
| ② 管理組合のルール | 民泊に関する細則や届出制度がないか |
| ③ 自治体のルール | 住宅宿泊事業法に加えた条例等がないか |
この3つを確認したうえで、住宅宿泊事業法、旅館業法、特区民泊など、自分の計画に合った制度を検討します。
住宅宿泊事業については、原則として1年間で180日以内という営業日数の上限があります。
また、自治体の条例によって営業できる区域や期間がさらに制限される場合があります。
最初に確認したい「管理規約」とは?
管理規約とは、マンションで暮らす区分所有者などが守る基本的なルールです。
国土交通省は、マンションの管理に関する具体的なルールについて、管理組合が管理規約を定める必要があると説明しています。
また、管理規約はマンションにおける「最高自治規範」とされています。
ここで注意したいのが、国土交通省の「マンション標準管理規約」です。
これは法律そのものではありません。
国土交通省が管理規約を作成・改正するときの参考となるひな型として示しているものです。
したがって、すべてのマンションが標準管理規約とまったく同じ内容になっているわけではありません。
管理規約のどこを確認すればいい?

まず探したいのは、専有部分の用途について定めた規定です。
国土交通省が公表している令和7年10月17日改正のマンション標準管理規約では、第12条に専有部分の用途についての規定があります。
同規約には、住宅宿泊事業を可能とする場合と禁止する場合、それぞれの規定例が示されています。
| 規約の内容 | 民泊の判断 |
|---|---|
| 住宅宿泊事業を認める規定がある | 他の条件も確認したうえで検討 |
| 住宅宿泊事業を禁止する規定がある | 住宅宿泊事業による民泊はできない |
| 民泊について明確な記載がない | 管理組合へ確認する |
| 短期宿泊・宿泊事業などを広く禁止 | 規約全体を確認する |
「民泊」という言葉が見つからないから大丈夫、と判断するのは危険です。
専有部分の用途、短期宿泊、不特定多数への貸し出しなどについて規定されている場合があります。
判断に迷った場合は、管理組合や管理会社に確認することが大切です。
「マンション標準管理規約」なら民泊禁止なの?
ここは少し分かりにくいところです。
国土交通省の標準管理規約には、住宅宿泊事業を禁止する場合の規定例が用意されています。
令和7年改正の標準管理規約でも、住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業を禁止する規定例が示されています。
一方で、標準管理規約そのものが法律ではないため、実際のマンションでは管理規約の内容を確認する必要があります。
つまり、「標準管理規約を見れば終わり」ではなく、「自分のマンションの管理規約を見る」ことが重要です。
管理規約で民泊が禁止されていたらどうする?
では、マンションで民泊を始めたいのに、管理規約で禁止されていた場合はどうでしょうか。
基本的には、その規約に反して民泊を始めることはできません。
国土交通省も、管理規約で民泊を禁止しているにもかかわらずマンションで民泊が行われている場合、違法民泊の疑いがあると案内しています。
ここで考えられるのが、管理規約の変更です。
管理規約を変更できる場合がある
マンションの管理規約は、マンションの管理組合が適切な手続きを経て変更することがあります。
ただし、個人が「民泊をしたいので規約を変えてください」と言えば、その場で変更できるというものではありません。
管理組合の総会など、マンションの規約や関係法令に沿った手続きが必要になります。
また、規約変更に賛成してもらえるかどうかは、それぞれのマンションの事情によって異なります。
そのため、民泊を目的として物件を購入する場合は、購入してから管理規約を確認するのではなく、購入前に確認することが重要です。
民泊を始める前に確認するチェックリスト
マンションで民泊を検討している場合は、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
| 順番 | 確認すること |
|---|---|
| 1 | マンションの管理規約を入手する |
| 2 | 専有部分の用途を確認する |
| 3 | 民泊・短期宿泊の禁止規定を確認する |
| 4 | 民泊に関する細則を確認する |
| 5 | 管理組合・管理会社へ確認する |
| 6 | 自治体の条例を確認する |
| 7 | 住宅宿泊事業法などの要件を確認する |
| 8 | 必要な届出・許可について確認する |
この順番なら、最初から細かな申請書類を集めるより、「そもそもこの物件で民泊ができるのか」を先に判断できます。
管理規約だけ確認すれば十分ではありません
マンションの管理規約で民泊が禁止されていないことは重要ですが、それだけで営業できるわけではありません。
住宅宿泊事業を行う場合は、住宅宿泊事業法に基づく届出などが必要です。
さらに、自治体によっては条例による営業区域や営業期間の制限があります。
消防設備、建築関係の条件などについても、物件の状況や採用する制度によって確認が必要になります。
したがって、マンションで民泊を始める場合は、次のように考えると分かりやすいでしょう。
↓
自治体のルールを確認
↓
住宅宿泊事業法・旅館業法などの制度を確認
↓
消防・建築などの条件を確認
↓
必要な届出・許可手続きへ
どこか一つでも条件を満たせない場合は、そのまま開業準備を進めるのではなく、別の方法がないか確認することが大切です。
賃貸マンションの場合はさらに注意
ここまで主に分譲マンションを想定して説明しました。
賃貸マンションの場合は、さらに所有者や貸主との契約関係を確認する必要があります。
自分が借りている部屋を民泊として使用するのであれば、「民泊ができるか」という管理規約だけでなく、賃貸借契約や転貸に関する条件なども確認しなければなりません。
賃貸物件で民泊を考えている場合は、所有者や管理会社への確認を先に行うことが重要です。
マンションで民泊を始めるなら「物件選び」の段階から確認
これから民泊用のマンションを購入する人は、特に注意が必要です。
一般的な不動産購入では、価格、立地、駅からの距離、築年数、間取りなどを中心に物件を比較します。
しかし、民泊を目的とするなら、それだけでは不十分です。
「そのマンションで民泊ができるのか」を物件選びの重要な条件にする必要があります。
できれば購入申込みや契約を進める前に、管理規約、使用細則、管理組合の方針などを確認しましょう。
管理規約が古い場合はどうする?
マンションによっては、かなり以前に作成された管理規約を使用している場合があります。
国土交通省は、令和7年10月17日にマンション標準管理規約を改正しています。
これは令和7年に改正されたマンション関係法などを踏まえたものです。
ただし、標準管理規約が改正されたからといって、各マンションの管理規約が自動的に同じ内容へ変更されるわけではありません。
現在の管理規約がどうなっているのかを確認することが先です。
国土交通省の最新のマンション標準管理規約は、以下の公式ページから確認できます。
まとめ|マンション民泊は「管理規約」が最初の確認ポイント
マンションで民泊を始めることは、条件を満たせば可能です。
しかし、住宅宿泊事業法の届出だけを見て判断するのは適切ではありません。
最初に確認したいのが、マンションの管理規約です。
「民泊を始められるかどうかは、法律だけでなく、そのマンションのルールも確認して判断する」ことが大切です。
特に購入前から民泊を予定している場合は、契約を進める前に管理規約を確認しましょう。
また、管理規約で民泊が禁止されている場合は、規約変更の可能性も含めて、管理組合のルールを確認する必要があります。
民泊は、届出書類を作ることから始めるのではありません。
「この物件で、本当に民泊ができるのか」を確認することから始まります。
この記事が、マンションで民泊を検討している方の物件選びや事前確認の参考になれば幸いです。
著者の一言
民泊というと、まず「どんな申請をすればいいのか」と考えがちです。
しかし、今回調べてみて改めて重要だと感じたのが、物件そのもののルールでした。
特にマンションでは、自分の部屋だけを見て判断するのではなく、建物全体のルールを確認する必要があります。
民泊を始めてから問題に気付くより、始める前に一つずつ確認しておく方が安心です。
次回予告
次回は、相談案件No.104「民泊申請で行政書士に依頼するメリット|費用相場と代行業務の内容」を取り上げます。
民泊の制度や管理規約を確認したあと、実際の申請を誰に依頼すればよいのか。
行政書士に依頼できる業務、依頼するメリット、費用を考えるときのポイントなどを整理します。
参照内部リンク
「民泊開業の許可・届出手続き完全ガイド|旅館業法との違いも比較」
「民泊新法(住宅宿泊事業法)とは?届出の流れと必要書類を解説」
参照外部リンク
・国土交通省「マンション標準管理規約」
・国土交通省「分譲マンションにおける民泊トラブル対応に関するガイドブック」
・国土交通省「マンション管理・再生ポータルサイト」



