はじめに:SNSで話題の「永住許可厳格化」、何が本当なのか
「永住許可、厳格化」「日本人の平均年収を超えないと取れなくなる」こうした見出しがSNSで拡散され、大きな反響を呼んでいます。
背景にあるのは、2026年に入って相次いで報じられている出入国在留管理庁(入管庁)の制度見直しです。
すでに施行済みのものと、方針が示された段階のものが混在しており、情報が錯綜しがちなテーマでもあります。
そこで本記事では、永住許可の新基準と、その一歩先に厳格化が実施された経営・管理ビザの状況を、公式発表と報道内容を分けたうえで、時系列に沿って整理します。
「今後どうなるのか」「自分の申請にどう影響するのか」を考えるための土台として役立てていただければと思います。
1. 永住許可の新しい条件(方針として報じられている内容)
2026年7月、政府が永住許可の運用指針(ガイドライン)を厳格化する方針を固めたと報じられました。現行のガイドラインでは、永住許可の要件は大きく次の3つで構成されています。
- 素行が善良であること
- 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
- その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
この3つ目の「国益要件」の運用を、より具体的な数値基準で判断する方向に見直すというのが今回の方針の骨子です。
報道されている新基準の主なポイントは以下のとおりです。
年収要件
日本人の平均世帯年収を、継続して上回っていることが求められる方向です。
厚生労働省が2026年7月に公表した「国民生活基礎調査」によれば、世帯の平均所得は575万円である一方、中央値は451万円にとどまり、平均以下の世帯が全体の6割以上を占めるとされています。
つまり、この基準がそのまま採用された場合、日本人世帯の過半数も届いていない水準を外国人の永住申請者に求めることになる点は、専門家からも指摘されています。
なお、これが「本人の給与年収」を指すのか「配偶者を含む世帯所得」を指すのかなど、算定方法の詳細は本稿執筆時点では公式に明らかになっていません。
年金要件
厚生年金に30年加入した場合と同等の受給見込みがあることが、原則として求められる方向です。
日本人であっても厚生年金に30年間継続加入できている人は限られるため、実務上のハードルとしてはかなり高いものになると見られています。
適用時期
報道によれば、年収要件は2026年4月以降の申請から適用される見通しとされています。
この点についてはメディアによって解釈が分かれており、現在審査中の案件にも遡って適用されるのか、申請時点で判断されるのかは、入管庁の公式発表を待つ必要があります。
あわせて検討されている制度
- 税金・社会保険料の滞納があった場合に、永住資格を取り消せる制度を2027年4月から導入予定
- 日本人・永住者との結婚を理由とする永住許可について、現行の「結婚3年以上・日本での生活実績1年以上」から、2026年10月以降は「結婚5年以上・日本での滞在3年以上」へ要件を引き上げる方向
注意点として、これらは2026年7月時点では「政府方針」「報道」の段階であり、入管庁による正式なガイドライン改定が確定したわけではありません。
最終的な基準・適用範囲は、今後の公式発表を必ず確認してください。
2. すでに施行済み:経営・管理ビザは「新規申請96%減」
永住許可の議論と並んで語られることが多いのが、一足先に厳格化が実施された「経営・管理」ビザです。
こちらは実際に制度改正が施行され、その効果が数字として報じられている点で、永住許可の議論とは段階が異なります。
何が変わったのか
2025年10月16日、出入国在留管理庁は経営・管理ビザの上陸基準省令等を改正しました。主な変更点は次のとおりです。
- 資本金要件の引き上げ:500万円以上 → 3,000万円以上
- 常勤職員の雇用義務:改正前は「資本金500万円」か「常勤職員2名雇用」のどちらかを満たせばよかったが、改正後は常勤職員1名以上の雇用が必須に(対象は日本人・特別永住者・永住者など)
- 日本語能力要件の追加:小学校高学年〜中学生程度の国語力を証明できる関係者が1名以上必要に
- 経歴・職歴の確認強化、専門家による事業計画書のチェックなど
申請件数への影響
2026年5月、TBS NEWS DIGなど複数のメディアが法務省関係者への取材として、次の数字を報じました。
- 改正前5か月間の月平均申請件数:約1,700件
- 改正後5か月間の月平均申請件数:約70件
- 減少率:約96%
ある行政書士事務所の例では、改正前は年間10〜15件程度受任していた経営・管理ビザの新規申請が、改正後はわずか1件にとどまったといいます。
厳格化後に許可された事例では、上場企業の役員クラスの申請者が多いとも報じられています。
ただし、この「96%減」という数字は法務省関係者への取材に基づく報道ベースの情報であり、入管庁が同一の統計を公式に公表しているわけではない点は留意が必要です。
既存のビザ保有者への経過措置
すでに経営・管理ビザを保有している人については、2028年10月16日までの間、新基準に完全に適合していなくても、経営状況や新基準への適合見込みなどを踏まえて判断される経過措置が設けられています。
だし、これは無条件に更新が認められるという意味ではない点に注意が必要です。
3. 不法残留者数の推移
同じ文脈で紹介されることが多いデータとして、不法残留者数の推移があります。
報じられている数字では、1年間で74,863人から68,488人へ、約8.5%減少したとされています。
この数値についても、一次資料(入管庁の統計公表)を直接確認することをおすすめします。
4. なぜ厳格化が進んでいるのか
こうした一連の厳格化の背景には、いくつかの要因が指摘されています。
- 経営・管理ビザを利用した実体のない法人設立(いわゆるペーパーカンパニー)や、在留資格取得だけを目的とした形式的な起業への懸念
- 外国人による不動産投資・民泊運営をめぐるトラブルの増加
- 永住者数が2025年末時点で約94万7,000人に達し、今後も増加が見込まれる中での、制度運用の見直し要求
一方で、こうした厳格化の動きに対しては、「日本で長く生活し、税金や社会保険料をきちんと納めてきた人まで一律に排除することにならないか」「中小規模で誠実に事業を営んできた外国人経営者が排除されるのではないか」といった懸念の声も上がっています。
実際、経営・管理ビザの厳格化をめぐっては、緩和を求める5万3,000筆規模の署名が提出されたとも報じられています。
在留資格や永住許可の制度をどう設計すべきかは、国益・労働力確保・生活実態の保障など複数の価値が絡む論点であり、立場によって評価が分かれるテーマです。
本記事では特定の評価を下すのではなく、公表されている事実関係を整理することを目的としています。
5. 今、何をすべきか(永住許可・経営管理ビザ双方に関係する方へ)
現時点で永住許可の申請を検討している方、あるいはすでに審査中の方は、次の点を確認しておくとよいでしょう。
- 税金・社会保険料の納付状況:滞納や遅延がないか、今のうちに確認・整理しておく
- 年収の推移資料:源泉徴収票や課税証明書など、過去数年分の年収を証明できる資料を準備しておく
- 年金の加入記録:「ねんきん定期便」などで、厚生年金の加入期間・見込み額を把握しておく
- 入管庁の公式発表を定期的に確認する:新基準の適用範囲や施行時期は、報道と公式発表で内容が異なる場合があるため、一次情報を必ず確認する
経営・管理ビザの新規取得や更新を検討している事業者の方は、資本金・常勤職員の雇用計画・事業計画書の内容について、早めに専門家(行政書士・入管業務に詳しい専門家)へ相談することをおすすめします。
まとめ
- 永住許可については、年収要件(日本人平均世帯年収を継続して上回ること)と年金要件(厚生年金30年加入相当)を柱とする厳格化方針が2026年7月に報じられたが、2026年7月時点ではまだ「政府方針」「報道」の段階であり、正式なガイドライン改定を待つ必要がある
- 経営・管理ビザはすでに2025年10月16日に厳格化が施行され、新規申請件数が月平均1,700件から70件へ、約96%減少したと報じられている(こちらも報道ベースの数字である点に留意)
- 不法残留者数はこの1年で約8.5%減少したとされる
- 制度の評価については賛否があり、公式情報を確認しながら冷静に判断することが重要
永住許可の厳格化は、多くの在留外国人・国際結婚家庭・企業の外国人雇用に直結するテーマです。今後、入管庁から正式なガイドラインが公表され次第、改めて詳細をお伝えします。
参考にした主な情報源
- 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン」
- 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」(2026年7月15日公表)
- 各種報道(TBS NEWS DIG ほか)および行政書士事務所による解説記事

