行政書士大前事務所制作ブログが調べた「相続人不存在と相続財産の国庫帰属について」
「父が亡くなったのですが、相続する人がいません」
「父が亡くなりました。
調べてみたのですが、子どもは私だけです。
私が相続放棄をしたら、父の家や預金はどうなるのでしょうか?」
相続の相談では、こうした疑問が出てくることがあります。
また、身寄りのない方が亡くなった場合にも、
「財産は最終的に誰のものになるの?」という問題が出てきます。
結論からいうと、相続人がいないからといって、亡くなった瞬間に財産が国のものになるわけではありません。
相続人が存在しないことが明らかになった場合には、
必要な清算手続きを行います。
そのうえで、債権者や受遺者への支払いなどを済ませ、
条件を満たせば、残った財産が国庫に帰属します。
この記事では、相続人がいない場合に、
財産がどのような順番で処理されるのかを整理します。
相続人がいない場合、財産はどうなる?
まず知っておきたいのは、「相続人がいない」ことと「相続人が誰も名乗り出ない」ことは同じではないという点です。
戸籍などを確認した結果、法律上の相続人がいない場合があります。
また、相続人が存在していても、全員が相続放棄をするケースがあります。
このような場合には、相続財産をそのまま放置することはできません。
家庭裁判所の手続きを利用して、
相続財産清算人を選任してもらうことがあります。
相続財産清算人とは?
相続財産清算人は、相続人がいるかどうか明らかでない場合などに、
亡くなった人の財産を管理・清算する役割を担う人です。
裁判所によると、相続財産清算人は、
相続財産を調査し、必要な清算を行います。
弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることもあります。
【ポイント】
相続人がいない場合でも、財産を勝手に処分するのではなく、法律に従った清算手続きが必要です。
「相続人がいない」と判断されるケース
ケース1 法律上の相続人がいない
亡くなった方について、法律上の相続人が存在しない場合です。
例えば、配偶者や子、直系尊属、兄弟姉妹などを確認しても、
相続人となる人が存在しないケースがあります。
ただし、相続人の有無は思い込みで判断できません。
戸籍などを確認して、相続関係を調査する必要があります。
ケース2 相続人全員が相続放棄した
もう一つ注意したいのが、相続人全員が相続放棄した場合です。
この場合も、相続する人がいなくなるため、
相続財産を清算する必要が生じることがあります。
裁判所も、相続人が全くいない場合や、
相続人全員が相続放棄した場合について、
相続財産清算人の選任手続きを案内しています。
ただし、相続放棄をした人が、その後も自由に財産を処分できるという意味ではありません。
相続放棄と、その後の相続財産の処理は分けて考える必要があります。
国庫に帰属するまでの流れ
相続人がいない場合の財産処理は、簡単にまとめると次のようになります。
【相続人不存在から国庫帰属まで】
① 相続人がいるか調査
↓
② 相続人がいないことが明らかになる
↓
③ 家庭裁判所へ相続財産清算人の選任を申立て
↓
④ 相続人を捜すための公告
↓
⑤ 債権者・受遺者への対応
↓
⑥ 特別縁故者への財産分与の可能性
↓
⑦ 残った財産を国庫へ
実際の手続きでは、財産の内容や債権者の有無などによって進み方が変わります。
相続財産清算人が行うこと
財産を調査する
相続財産清算人は、亡くなった方の財産を調査します。
預貯金、不動産、有価証券などだけではありません。
借金などの債務についても確認する必要があります。
つまり、単に「財産を集める」だけではなく、
相続財産全体を整理して清算する役割があります。
相続人を捜すための公告
相続人が本当にいないのかを確認するため、
家庭裁判所による公告などが行われます。
裁判所の案内では、相続財産清算人が選任された後、
相続人を捜すための公告が行われます。
その公告期間が満了するまでに相続人が現れなければ、
相続人がいないことが確定します。
債権者や受遺者への対応
亡くなった方に借金があった場合、
債権者との関係も整理しなければなりません。
また、遺言によって財産を受け取ることになっていた人がいる場合には、
受遺者への対応も必要になります。
そのため、「相続人がいないから財産を自由に処分できる」ということではありません。
特別縁故者なら財産を受け取れる場合がある
ここは、相続人がいない場合に特に重要なポイントです。
相続人がいない場合でも、一定の条件を満たす人が、
財産の分与を受けられる場合があります。
これを「特別縁故者に対する相続財産分与」といいます。
特別縁故者とは?
裁判所の説明では、被相続人と特別な関係があった人などが対象となることがあります。
例えば、長期間同居していた人や、
療養看護に努めていた人などが例として挙げられています。
ただし、単に「仲が良かった」「親しかった」というだけで、
当然に財産を受け取れるわけではありません。
家庭裁判所への申立てと審判が必要です。
申立てには期限がある
特別縁故者として財産の分与を希望する場合、
相続人を捜すための公告期間が満了した後、3か月以内に申立てをする必要があります。
この期限は重要です。
「相続人がいないから、そのうち相談すればいい」と考えていると、
申立ての期間を過ぎてしまう可能性があります。
裁判所も、特別縁故者に対する相続財産分与の申立期間について、公告期間満了後3か月以内と案内しています。
最後まで残った財産は国庫へ
必要な清算を行い、特別縁故者への財産分与などを終えても、
財産が残ることがあります。
その場合、残った財産は最終的に国庫に帰属します。
つまり、国庫帰属は最初に行われる処理ではありません。
相続人の確認、公告、債権者や受遺者への対応、特別縁故者への対応などを経た後の最終段階です。
【覚えておきたいこと】
相続人がいない
↓
すぐ国庫に入る
という単純な仕組みではありません。
法律に定められた清算手続きを経て、
最後に残った財産が国庫に帰属します。
「相続土地国庫帰属制度」とは別の制度
ここは非常に間違えやすいところです。
「相続人がいない場合の国庫帰属」と「相続土地国庫帰属制度」は同じ制度ではありません。
相続人がいない場合の国庫帰属
相続人が存在しないなどの場合に、
相続財産を清算したうえで残った財産が国庫に帰属する仕組みです。
相続土地国庫帰属制度
一方、相続土地国庫帰属制度は、
相続などによって土地を取得した人が、
一定の要件を満たした場合に土地所有権を国庫へ帰属させる制度です。
法務省は、この制度について、令和3年に成立・公布された法律に基づく制度として案内しています。
したがって、「相続人がいないから土地を国に返す制度」と考えるのは誤りです。
この2つは、制度の目的も利用できる人も異なります。
相続人がいない場合に確認したい財産

相続人がいない可能性がある場合は、まず財産の全体像を把握することが大切です。
| 確認するもの | 確認内容 |
|---|---|
| 預貯金 | 銀行・支店・口座など |
| 不動産 | 土地・建物・登記内容 |
| 株式等 | 証券会社などの保有資産 |
| 借入金 | 住宅ローン・借入・未払いなど |
| 遺言 | 遺贈の有無など |
財産が多い場合だけでなく、
借金や管理が必要な不動産がある場合にも注意が必要です。
不動産が残っている場合は特に注意
相続人がいない場合、空き家や土地が残ることがあります。
不動産は預金のように口座を解約して終わり、とはいきません。
固定資産税、管理、建物の老朽化など、
さまざまな問題が関係します。
そのため、相続人がいないことが分かった場合には、
「誰が管理するのか」を早めに確認することが重要です。
相続人がいないとき、自分で判断してはいけないこと
勝手に財産を売却する
相続人ではない人が、亡くなった方の財産を自由に売却できるわけではありません。
必要な処分については、相続財産清算人や家庭裁判所の手続きが関係する場合があります。
「誰も相続しないから放置する」
これも避けるべきです。
財産が不動産の場合には、管理上の問題が生じることがあります。
借金や債権者が関係する場合もあります。
相続人がいない場合こそ、財産の状態を確認して、必要な手続きを整理することが重要です。
行政書士に相談できること
相続人がいないと思われる場合でも、最初から「国庫に入る」と決めつけるのは適切ではありません。
まずは、相続関係や財産の状況を整理する必要があります。
相続財産に関する書類の整理などをサポートできます。
ただし、家庭裁判所への申立てなど、
行政書士が代理できない手続きもあります。
その場合は、弁護士や司法書士など、
手続きに応じた専門家への相談が必要です。
「自分だけで全部やらなければならない」と考えず、どの手続きを誰に相談するかを整理することが大切です。
まとめ|相続人がいなくても、財産はすぐ国のものにはならない
今回は、相続人がいない場合の財産について解説しました。
重要なポイントを整理します。
● 相続人がいないからといって、すぐ国庫に帰属するわけではない
● 相続人がいない場合は、相続財産清算人による清算が行われることがある
● 債権者や受遺者への対応が必要になる
● 条件を満たせば特別縁故者への財産分与が認められる場合がある
● 特別縁故者の申立てには期間がある
● 清算後に残った財産が最終的に国庫へ帰属する
● 相続土地国庫帰属制度とは別の制度である
「誰が財産を受け取るのか」だけでなく、
「誰が財産を管理し、債務や債権を整理するのか」も重要です。
身近な人が亡くなり、相続人がいないことが分かった場合は、
財産をそのまま放置せず、早めに専門家や家庭裁判所へ確認しましょう。
著者の一言
今回調べてみて、私が特に注意したいと思ったのは、
「相続人がいない=すぐ国のもの」というわけではないことです。
実際には、その前にいくつもの確認や清算があります。
また、長年一緒に暮らしていた人などが、
特別縁故者として財産分与を受けられる可能性もあります。
相続の問題は、知らないまま判断すると、
大切な期限を逃してしまうことがあります。
分からないことがあれば、まず財産と相続関係を整理する。
それだけでも、次に何をすればよいのかが見えやすくなります。
内部リンク・外部リンクの提案
内部リンク
今回の記事では、相続人全員が相続放棄したケースにも触れています。
相続放棄そのものの期限や手続きを詳しく知りたい読者を、No.1記事へ誘導します。
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次回予告
次回は「遺産分割協議書の作成方法と行政書士に依頼するメリット」を取り上げます。
相続人が複数いる場合、財産を誰がどのように受け取るのかを決める必要があります。
その話し合いを記録する重要な書類が、遺産分割協議書です。
どんな内容を書けばよいのか、なぜ作成するのか、行政書士に依頼すると何が変わるのかを、できるだけ分かりやすく解説します。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


