相談内容例|「父に婚外子がいる」と突然知らされた
父が亡くなり、家族で相続手続きを始めました。
父には、私と弟の2人の子がいると思っていました。
ところが、戸籍を調べてみると、私たちが知らなかった子どもの記載が見つかりました。
その子は、父と母が婚姻していない時期に生まれた子でした。
家族からは、
「その子にも相続する権利があるの?」
「昔のことだから、相続人にはならないのでは?」
「認知していたかどうかも分からない」
という声が出ました。
さらに、相続財産には自宅と預貯金があります。
誰が相続人なのか分からないまま、遺産分割協議を進めることもできません。
このような場合、まず必要なのは、感情的に話し合うことではありません。
戸籍を確認して、法律上の親子関係と相続人を整理することです。
戸籍から認知の有無などを確認し、相続人の範囲を整理します。
そのうえで、実際の遺産分割をめぐって争いが生じた場合は、必要に応じて弁護士など専門家への相談を検討します。

非嫡出子にも相続権はあるの?
事実:現在は法定相続分に差はありません
まず、昔の情報と現在の法律を分けて考える必要があります。
現在の民法では、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分は同等です。
以前は、嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする規定がありました。
しかし、平成25年の民法改正によって、この差はなくなりました。
法務省によると、改正後の民法は、平成25年9月5日以後に開始した相続について適用されています。
「婚外子だから相続分が少ない」という理解は、現在の法律については誤りです。

では、何が問題になるのでしょうか?
ここで重要になるのが、「その人が法律上の子として認められているか」です。
相続では、単に「父親が同じだと思う」というだけでは判断できません。
戸籍などの公的な記録を確認し、相続人の範囲を確定していく必要があります。
相続人の確定では、現在の戸籍だけを見れば十分とは限りません。
裁判所の案内でも、相続関係を確認するため、被相続人の出生から死亡までの戸籍等を確認することが示されています。
認知とは何か?
父親との法律上の親子関係を確認する重要なポイント
「認知」という言葉を初めて聞く方もいると思います。
簡単にいうと、婚姻関係にない男女の間に生まれた子について、父との法律上の親子関係を成立させる制度です。
そのため、非嫡出子の相続問題では、
「父が認知しているか」
が重要な確認事項になります。
戸籍を調べることで、認知に関する記載が確認できる場合があります。
ただし、戸籍に記載された内容だけで問題がすべて解決するとは限りません。
親子関係そのものに争いがある場合や、認知の効力などが争点になる場合には、法律上の判断が必要になります。
戸籍を調べると何が分かる?
相続人調査では、戸籍を一つずつ確認していきます。
イメージとしては、次のような流れです。
法務局の「法定相続情報証明制度」では、戸籍の記載から判明する被相続人と相続人を一覧図にして、法務局の確認を受けることができます。
「知らない子」が戸籍にいたら、どうする?
まず感情ではなく事実を確認する
実際に相続手続きをしていると、
「そんな子がいるとは知らなかった」
というケースがあります。
家族にとっては大きな問題です。
しかし、ここで、
「父が認めていなかったから相続人ではない」
と決めつけるのは危険です。
逆に、
「戸籍に名前があるから、すべてその人の主張どおりになる」
とも限りません。
まずは戸籍などの資料を確認します。
そして、
①誰が法律上の相続人なのか
②それぞれの法定相続分はどうなるのか
③遺産分割について争いがあるのか
を分けて考えることが大切です。
行政書士に相談できること
相談内容一覧では、このケースについて行政書士の具体的対応として、誰が法律上の相続人なのかが挙げられています。
つまり、相続の最初の段階である、
「誰が相続人なのかを資料から整理する」
という仕事が重要になります。
戸籍を読み解く作業は、慣れていない人には意外と難しいものです。
戸籍が何度も改製されていたり、転籍していたりすると、現在の戸籍だけでは過去の情報が分からない場合があります。
法務局も、相続手続きでは戸除籍謄本等の確認が必要になることを案内しています。
行政書士だけで解決できないケースもあります
ここは明確に区別しておきましょう
相続人の調査と、相続人同士の争いは別問題です。
例えば、
「この子は本当に父の子なのか」
「認知の効力を争いたい」
「遺産をどう分けるかで話し合いがまとまらない」
「相続分をめぐって相手と裁判になりそうだ」
という場合は、行政書士の業務だけで解決できるとは限りません。
行政書士は、戸籍収集や相続関係の整理など、相続手続きの準備を支援できます。
紛争について代理人として相手方と交渉したり、訴訟手続きを代理したりすることは、行政書士の業務範囲ではありません。
そのような場合は、弁護士への相談が必要になることがあります。
ここを混同しないことが大切です。
法定相続情報一覧図も利用できます
相続人が複数いる場合、戸籍の束を何度も提出するのが大変になることがあります。
そこで利用を検討できるのが、法定相続情報証明制度です。
法務局では、必要な戸籍を収集し、法定相続情報一覧図を作成して申出を行う手続きが案内されています。
法定相続情報一覧図の写しは、相続手続きや年金等の手続きに利用できます。
ただし、注意点があります。
法定相続情報一覧図は、戸籍等の記載に基づいて法定相続人を明らかにする制度です。
遺産分割協議の結果などによって、実際に財産を取得しない人がいる場合でも、その人が一覧図に記載されることがあります。
非嫡出子の相続問題で確認したい5つのポイント
この順番で整理すると、問題が見えやすくなります。
「婚外子だから相続できない」は間違いです
ここは、今回の記事で一番覚えておいてほしいところです。
現在の法律では、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分は同等です。
平成25年の民法改正によって、以前の「嫡出でない子は嫡出子の2分の1」という規定は削除されました。
したがって、
「婚外子だから相続できない」
「婚外子だから相続分が半分」
という説明を、そのまま信じてはいけません。
ただし、古い相続については経過措置や、すでに遺産分割などが確定しているかどうかによって扱いが異なります。
法務省も、平成25年9月4日以前に開始した相続については、確定的な法律関係などを考慮する必要があると説明しています。
古い相続を扱う場合は、個別に確認することが重要です。
まとめ|まずは戸籍を確認しましょう
非嫡出子の相続問題では、最初から家族同士で結論を出そうとする必要はありません。
まず、
「戸籍を確認する」
ことから始めます。
そして、
を一つずつ整理します。
相続人調査や戸籍収集は、行政書士に相談できる分野です。
一方、親子関係や遺産分割について当事者間で争いになっている場合は、弁護士への相談も必要になります。
「相続人が誰なのか分からない」
という段階でも、まず相談することには意味があります。
分からないまま遺産分割協議を進めないこと。
これが大切です。
著者の一言
事実:
現在は、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分に差はありません。
相続人を確定するには、戸籍などの公的資料を確認する必要があります。
意見:
家族にとっては、戸籍に知らない名前が出てくるだけでも大きな驚きだと思います。
だからこそ、感情だけで判断せず、まず事実を確認する。
そのうえで、必要な専門家に相談する。
この順番が大切だと思います。
次回予告
次回は、「再婚家庭で連れ子の相続人範囲が分からない」という相談を取り上げます。
再婚した家庭では、
「連れ子にも相続権があると思っていた」
「養子縁組をしていたか分からない」
という問題が起こることがあります。
次回も、戸籍を確認することで何が分かるのか、行政書士に何を相談できるのかを整理します。
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