一人親方の法人設立手続き完全ガイド!行政書士に依頼するメリットと費用相場

法人化

一人親方が法人を設立するには、会社の基本事項を決め、定款を作成し、法務局で設立登記を行う必要があります。

ただし、会社を設立しただけでは手続きは終わりません。
税務署への届出や社会保険の手続き、建設業許可を取得している場合の対応も重要です。

この記事では、法人設立の流れと費用、行政書士に依頼できる業務、専門家を選ぶときの注意点を、一人親方の立場からわかりやすく解説します。

1.一人親方が法人を設立する前に確認したいこと

相談事例:法人化したいけれど、何から始めればよい?

個人事業主として建設業を営むAさんは、取引先から法人との契約を勧められました。

売上も安定してきたため、株式会社か合同会社を設立しようと考えています。
しかし、会社設立の手順も費用もわからず、建設業許可がどうなるのかも心配です。

一人親方のAさんの疑問

  • 株式会社と合同会社は、どちらがよいのか
  • 会社設立には、いくら用意すればよいのか
  • 行政書士に頼めば、登記まで全部任せられるのか
  • 法人化すると、建設業許可はそのまま使えるのか

このような疑問を解決するには、会社の形態、設立費用、専門家の役割を分けて考えることが大切です。

法人化は、会社を作るだけの手続きではありません

法人設立では、会社の設立登記だけでなく、税務や社会保険、取引先との契約なども検討します。

建設業許可を持っている一人親方は、許可の扱いについても事前確認が必要です。
個人事業主として受けた許可が、設立した法人にそのまま移るわけではありません。

この記事のポイント
会社設立の費用だけで判断せず、設立後の手続きや毎年かかる維持費まで含めて計画しましょう。

2.株式会社と合同会社の違い

一人親方が法人化するときは、株式会社と合同会社が主な選択肢になります。
どちらも法人として事業を行えますが、設立費用や運営方法に違いがあります。

比較項目 株式会社 合同会社
設立時の定款認証 必要 不要
設立登記の登録免許税 最低15万円 最低6万円
役員の呼び方 取締役など 業務執行社員・代表社員など
対外的な印象 株式会社を指定する取引先にも対応しやすい 小規模経営などで設立費用を抑えたい場合に選択肢となる
向いている考え方 将来の事業拡大や取引先との関係を重視 設立費用や運営のシンプルさを重視

株式会社の設立登記にかかる登録免許税は、資本金の額の1,000分の7で、計算額が15万円未満の場合は15万円です。

合同会社は資本金の額の1,000分の7で、計算額が6万円未満の場合は6万円です。いずれも、登録免許税以外の費用が別途かかります。

根拠:
法務省「株式会社の設立手続(発起設立)」
法務省「合同会社の設立手続について」

建設業の一人親方は、取引先の条件も確認する

合同会社は設立費用を抑えやすい一方、取引先によっては株式会社を指定する場合があります。

法人化を決める前に、元請けや主要な取引先に、法人形態について条件があるか確認しておくと安心です。

3.一人親方が法人を設立する7つの手順

手順1:会社の基本事項を決める

最初に、会社の土台となる事項を決めます。

  • 会社名(商号)
  • 本店所在地
  • 事業目的
  • 資本金
  • 出資者と役員
  • 事業年度(決算月)

建設業を続ける予定なら、事業目的には実際に行う工事や関連事業を適切に記載します。将来、建設業許可を申請する予定がある場合は、許可要件との関係も確認しましょう。

事業目的を広く書けばよいというものではありません。
実際の事業内容と整合するように決めることが大切です。

手順2:定款を作成する

定款とは、会社の目的や組織、運営に関する基本ルールを定めた書類です。

株式会社の場合、原則として公証人による定款認証が必要です。
合同会社では、公証人による定款認証は必要ありません。

定款には、商号や事業目的、本店所在地、出資など、会社形態に応じた必要事項を記載します。

参照:法務省・株式会社の設立手続

手順3:資本金を払い込む

定款など必要な書類を整えたら、出資金を払い込みます。
払込みの証明方法や必要書類は、会社形態や申請方法によって異なります。

資本金は、設立後の仕入れ、工具の購入、車両費、事務所費用なども考慮して検討しましょう。

資本金をいくらにすればよいかは、事業規模や取引先の条件などによって変わります。

資本金を決めるときの注意点
設立時の金額だけでなく、会社を設立した直後に必要な運転資金も見積もっておきましょう。
資本金を大きくすれば必ず有利になるわけではありません。

手順4:設立登記を申請する

必要書類を整え、会社の本店所在地を管轄する法務局に設立登記を申請します。
登記によって会社の基本情報が公示され、法人として事業を始める基礎が整います。

登記申請は、会社法務に詳しい司法書士に相談する方法があります。
また、法務省は、要件を満たす本人がマイナンバーカードなどを利用してオンライン申請する方法も案内しています。

参照:法務局「株式会社の設立登記をしたい方(オンライン申請)」、法務局「合同会社の設立登記をしたい方(オンライン申請)」

手順5:税務署などに必要な届出を行う

会社を設立したら、税務関係の届出を確認します。
法人設立届出書は、原則として設立の日以後2か月以内に提出します。

設立第1期から青色申告を希望する場合は、青色申告の承認申請書の期限にも注意が必要です。
原則として、設立の日以後3か月を経過した日と最初の事業年度終了日のうち、早い日の前日までです。

給与を支払う場合などは、給与支払事務所等の開設届出書など、状況に応じた手続きも必要になります。

参照:国税庁「新設法人の届出書類」

手順6:社会保険の加入手続きを確認する

法人事業所は、事業主だけの場合も含め、健康保険・厚生年金保険の適用対象となるのが原則です。
実際の加入手続きは、事業所や役員の状況などを確認して進めます。

個人事業主時代の国民健康保険・国民年金と、法人化後の社会保険では、保険料の計算や負担の仕組みが変わります。

設立後の資金繰りを考えるうえでも、早めに確認しておきましょう。

参照:日本年金機構「事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき」

手順7:事業運営に必要な準備をする

登記や届出と並行して、事業を続けるための実務も整えます。

  • 法人名義の銀行口座の開設を検討する
  • 会計処理や請求書の発行方法を整える
  • 元請けや取引先と契約名義を確認する
  • インボイス登録の要否を検討する
  • 工具・車両・在庫・契約などの扱いを確認する
  • 個人事業の廃業に関する税務手続きを確認する

個人事業から法人に変わる場合、契約や資産がすべて自動的に法人へ移るわけではありません。
取引先や税理士などに確認し、必要な手続きを整理しましょう。

4.法人設立にかかる費用の目安

一人親方が法人化を検討するとき、気になるのが設立費用です。ここでは、主な公的費用を整理します。

費用項目 株式会社 合同会社
設立登記の登録免許税 最低15万円 最低6万円
定款認証手数料 資本金等に応じて3万・4万・5万円など 不要
定款の印紙税 紙で作成する場合は原則4万円。電子定款は印紙税の対象外 紙で作成する場合は原則4万円。電子定款は印紙税の対象外
専門家への報酬 依頼内容や事務所によって異なる 依頼内容や事務所によって異なる

株式会社の定款認証手数料は、一定の条件のもと、資本金等が100万円未満なら3万円、100万円以上300万円未満なら4万円、それ以外は5万円です。
具体的な適用条件は公証人の案内で確認してください。

参照:日本公証人連合会「定款認証に要する費用」

注意:設立費用の合計は一律ではありません
資本金、定款の作成方法、会社形態、専門家への依頼範囲などによって総額は変わります。上記は主な費用項目であり、専門家報酬を含む確定見積もりではありません。

設立費用だけでなく、設立後の維持費も考える

法人化後は、決算・法人税申告、会計処理、社会保険料などの負担も考慮する必要があります。
税理士などに依頼する場合は、その報酬も確認しましょう。

法人化で得られる取引上のメリットと、継続的にかかる費用を比較して判断することが大切です。

5.行政書士に依頼するメリットと注意点

行政書士に相談できること

行政書士は、官公署に提出する書類の作成や、許認可に関する相談などを取り扱います。一人親方の法人化では、建設業許可を視野に入れた事業目的の検討や、許認可に関連する書類の相談などが考えられます。

特に建設業許可を取得したい、またはすでに取得している一人親方は、法人設立と許可手続きの関係を整理しておくと安心です。

登記申請は専門家の役割を確認する

会社の設立登記は、行政書士の一般的な書類作成業務とは区別して考える必要があります。
登記申請を専門家に依頼したい場合は、司法書士など、登記手続きを取り扱う専門家に相談しましょう。

税務申告や税務相談は税理士、社会保険の手続きは社会保険労務士など、必要な業務に応じて専門家を選ぶことが大切です。

行政書士に相談するときのポイント
「法人設立を全部お願いしたい」と伝えるだけでなく、建設業許可、登記、税務、社会保険のうち、どの業務を依頼できるのか、誰が担当するのかを事前に確認しましょう。

専門家の費用は、依頼範囲をそろえて比較する

専門家への報酬は、会社形態や依頼内容、事務所によって異なります。
単純に金額だけを比較せず、定款作成、登記、許認可相談、設立後の届出など、見積もりに含まれる業務を確認してください。

見積もりを取るときは、次の点を確認すると比較しやすくなります。

  • 公的な税金・手数料が含まれているか
  • 専門家報酬はいくらか
  • 登記や税務、社会保険の手続きは含まれるか
  • 建設業許可に関する相談・申請は別料金か
  • 設立後の相談や変更手続きに対応しているか

6.建設業許可を持つ一人親方が法人化するときの注意点

建設業許可を持っている一人親方は、法人を設立する前に、許可の扱いを必ず確認してください。

個人事業主として取得した建設業許可が、新しく設立した法人に自動的に引き継がれるわけではありません。
法人として工事を請け負うためには、状況に応じた許可手続きが必要になります。

また、許可を受けるための経営業務管理責任者や営業所技術者等の要件、財産要件などについても、法人として満たせるかを確認する必要があります。

避けたい進め方
法人登記を済ませてから許可の問題に気づき、工事の契約や受注に影響が出ることです。法人化の計画段階で、許可行政庁や建設業許可に詳しい専門家に確認しておきましょう。

建設業許可を持つ方は、次の記事もあわせてご覧ください。

【関連記事】
一人親方は建設業許可を取るべき?取得条件とメリットを解説
法人化したら建設業許可はどうなる?「法人成りの新規申請」の手順と注意点

7.法人設立前のチェックリスト

設立を進める前に、次の項目を確認しておきましょう。

  • 株式会社か合同会社かを決めた
  • 会社名・所在地・事業目的を整理した
  • 資本金と設立後の運転資金を検討した
  • 定款と登記に必要な書類を確認した
  • 税務署への届出期限を確認した
  • 社会保険の加入手続きを確認した
  • 個人事業の契約・資産・廃業手続きを整理した
  • 建設業許可への影響を確認した
  • 専門家の担当範囲と見積もりを確認した

まとめ:一人親方の法人設立は、設立後まで見据えて準備する

一人親方が法人を設立するには、会社の基本事項を決め、定款を作成し、設立登記を行います。その後、税務や社会保険などの手続きも必要です。

株式会社と合同会社では設立費用や手続きに違いがあります。
また、専門家に依頼する場合は、行政書士・司法書士・税理士・社会保険労務士それぞれの業務範囲を確認しましょう。

建設業許可を取得している方は、法人化によって許可の扱いが変わる点にも注意が必要です。
会社を設立してから慌てないよう、事前に手順と費用を整理しておきましょう。

著者の一言

法人設立について調べてみると、登記だけでなく、税務や社会保険、許可の手続きまで関係していることがわかります。

最初からすべてを一人で理解しようとしなくても大丈夫です。
まずは会社形態と費用を整理し、必要なところを専門家に相談することから始めてみてください。

次回予告

次回は、「法人化したら建設業許可はどうなる?『法人成りの新規申請』の手順と注意点」を解説します。

個人事業主として建設業許可を取得している一人親方が、法人化するときに確認したい許可の扱いや申請手順を整理します。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。皆さまの事業運営に役立つ情報を、これからもわかりやすくお届けしていきます。


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