民泊の上乗せ条例とは?自治体の営業規制と確認方法

民泊

行政書士大前事務所制作ブログが調べた「民泊の自治体条例及び営業規制の事前確認について」

相談内容例:「180日までなら、どこでも民泊できますよね?」

相談者:
「民泊新法では年間180日まで営業できると聞きました。空いている一戸建てを民泊にしたいのですが、180日までなら全国どこでも営業できるのでしょうか?」
行政書士:
「実は、そうとは限りません。住宅宿泊事業法では年間180日以内という全国共通のルールがありますが、自治体が条例によって営業する区域や期間を制限できる仕組みがあります。」
相談者:
「ということは、180日営業できると思って物件を買っても、実際にはもっと短い期間しか営業できないことがあるのですか?」
行政書士:
「はい。だからこそ、民泊を始めるときは、国のルールだけでなく、物件所在地の自治体の条例を確認することが大切です。」
相談者:
「自治体によって、そんなに違うのですか?」
行政書士:
「違いがあります。区域や期間だけでなく、事前相談、周辺住民への説明、管理体制など、自治体独自のルールが設けられている場合もあります。」
相談者:
「それなら、物件を決める前に調べたほうがよさそうですね。」
行政書士:
「その通りです。民泊は『物件を決めてから条例を調べる』のではなく、『条例を確認してから物件を決める』くらいの順番で考えると安心です。」

民泊の「上乗せ条例」とは?

民泊について調べていると、「上乗せ条例」という言葉を目にすることがあります。

これは、住宅宿泊事業法そのものとは別に、自治体が地域の実情に応じて設けている独自のルールを指して使われることが多い言葉です。

住宅宿泊事業法では、年間の提供日数を180日以内としています。

一方で、同法には、自治体が条例によって住宅宿泊事業の実施を制限できる仕組みがあります。

東京都も、住宅宿泊事業について「年間提供日数の上限は180日」としたうえで、地域の実情を反映する仕組みとして区域・期間制限条例があると案内しています。

つまり、次のように考えると分かりやすいでしょう。

民泊の営業ルールを考える基本

国のルール

住宅宿泊事業法による年間180日以内

自治体の条例を確認

区域・期間などの追加制限があれば、それにも従う

したがって、「180日まで営業できる」ことと、「自分の物件で180日営業できる」ことは同じではありません。

なぜ自治体によって規制が違うの?

民泊は住宅地の中で行われることがあります。

そのため、地域によっては、観光客の受け入れだけでなく、住民の生活環境とのバランスを考える必要があります。

例えば、住宅が多い地域と観光地では、宿泊需要や地域の事情が異なります。

住宅宿泊事業法では、こうした地域の実情を反映できるよう、自治体による条例上の制限が認められています。

国土交通省・観光庁も、地方公共団体の条例による住宅宿泊事業の実施制限について、区域や期間などを整理しています。

ここで大切なのは、「全国共通の民泊ルールを覚えれば十分」という制度ではないということです。

物件の住所が決まったら、その住所を管轄する自治体のルールまで確認する必要があります。

自治体の条例で確認したい主な項目

民泊の物件を検討するときは、自治体のホームページなどで、次の項目を確認しましょう。

確認項目 確認する内容
営業区域 民泊を営業できない区域があるか
営業期間 営業できる曜日・時期などの制限があるか
事前相談 届出前に自治体への相談が必要か
近隣対応 周辺住民への説明などが必要か
管理体制 苦情窓口など独自の対応が必要か
標識・掲示 自治体独自の表示方法があるか

ただし、すべての自治体で同じ項目が同じように規定されているわけではありません。

実際の物件所在地を基準に確認することが重要です。

地域によって民泊の営業ルールはどう違う?

ここでは、現在公開されている自治体の情報を例に見てみましょう。

東京都の場合

東京都は、住宅宿泊事業について、年間提供日数の上限を180日としながら、地域の実情を反映するために区域・期間制限条例があることを案内しています。

また、東京都は住宅宿泊事業に関するガイドラインやハンドブックを公開しており、事業を行う場合には、これらを確認するよう案内しています。

ただし、東京都の場合でも、すべての地域を同じルールとして考えることはできません。

東京都内には特別区や八王子市、町田市など、所管が異なる地域があります。

そのため、「東京都だからこのルール」と大きく一括りにせず、物件所在地の自治体まで確認することが重要です。

大阪市の場合

大阪市では、2026年8月時点の案内で、「大阪市住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例」に基づき、住宅宿泊事業の実施区域と期間の制限を行っていると明記されています。

つまり、大阪市でも住宅宿泊事業法の全国共通ルールだけで判断することはできません。

大阪市は、住宅宿泊事業について、届出書類だけでなく、消防法令適合通知書、周辺住民等への説明に関する書類なども案内しています。

また、住宅宿泊事業の届出前に、自治体のガイドラインや手引きを確認するよう案内しています。

大阪市で民泊を検討する場合は、大阪市「住宅宿泊事業について」で最新の区域・期間制限を確認することが重要です。

「180日あるから大丈夫」と考えるのが危険な理由

民泊を始める人が最初に注意したいのが、この部分です。

例えば、年間180日営業できると思って収支計算をしたとします。

ところが、自治体の条例によって営業できる期間が限定されていた場合、当初の収支計画そのものを見直す必要が出てきます。

これは、単なる届出上の問題ではありません。

物件の購入費、リフォーム費用、家具・家電、清掃費、管理費などをかけてから「思ったほど営業できない」と分かると、事業計画に大きく影響します。

そのため、民泊の営業可能日数は、収支計算をする前に確認しておきたい重要項目です。

物件を探す前に確認する「民泊チェック5項目」

1.物件の住所

最初に必要なのは正確な住所です。

「大阪府」「東京都」だけでは足りない場合があります。

市区町村や、場合によっては用途地域まで確認する必要があります。

2.自治体の民泊条例

自治体のホームページで「住宅宿泊事業」「民泊条例」「実施制限」などを確認します。

自治体によって名称や掲載場所が異なるため、検索するときは複数の言葉を使うと見つけやすくなります。

3.営業できる区域

物件の所在地が、住宅宿泊事業を実施できる区域なのか確認します。

同じ市区町村内でも区域によって扱いが異なる場合があります。

4.営業できる期間

「年間180日以内」という国の上限だけでなく、自治体の条例によってさらに期間が限定されていないかを確認します。

5.届出前の手続き

事前相談、周辺住民への説明、消防署への相談など、届出前に必要な確認がないかを調べます。

自治体によっては、届出書を提出する前に複数の準備が必要になることがあります。

民泊の自治体条例を調べる具体的な手順

初めて調べる人は、次の順番で確認すると分かりやすいでしょう。

STEP1 物件の住所を確定する

STEP2 所管する自治体を確認する

STEP3 「住宅宿泊事業・民泊条例」を検索する

STEP4 営業区域・営業期間を確認する

STEP5 事前相談や近隣説明の有無を確認する

STEP6 消防・建築・管理規約などを確認する

STEP7 必要な届出・手続きを進める

この順番で調べれば、「民泊ができると思って契約したのに、条例で営業が難しかった」という問題を避けやすくなります。

マンションや賃貸物件は条例以外も確認する

自治体の条例を確認したからといって、民泊ができるとは限りません。

マンションなら管理規約、賃貸物件なら賃貸借契約なども確認する必要があります。

例えば、自治体の条例上は住宅宿泊事業が可能でも、マンションの管理規約で民泊が禁止されている場合があります。

賃貸物件についても、所有者から民泊として使用することについて承諾を得る必要がある場合があります。

そのため、民泊の可否は次のように考えると分かりやすくなります。

確認するもの 確認するポイント
住宅宿泊事業法 全国共通の基本ルール
自治体条例 区域・期間などの追加規制
管理規約 マンションでの民泊可否
賃貸借契約 民泊利用・転貸の可否
消防関係 必要な設備・確認
建築関係 用途・建物条件など

前回の記事「180日制限」と今回の条例をセットで考える

前回のNo.106では、住宅宿泊事業法の年間180日制限について取り上げました。

今回の記事で覚えておきたいのは、「180日」という数字だけでは民泊の営業日数は判断できないということです。

国のルールとして180日以内であっても、自治体の条例によって営業できる期間がさらに制限される場合があります。

したがって、民泊を始めるときは、

「180日以内か?」→「自治体条例ではどうなっているか?」

という2段階で確認することが大切です。

前回の記事「家主居住型と家主不在型の違い」
とも関連するため、家主の居住状況や管理体制と合わせて確認しておきましょう。

行政書士に相談するときに準備しておきたい資料

自治体の条例や民泊の可否について行政書士へ相談する場合は、次の資料があると確認しやすくなります。

  • 物件の正確な住所
  • 登記事項証明書など物件が確認できる資料
  • 建物の間取り図
  • マンションの管理規約
  • 賃貸借契約書
  • 物件の写真
  • 予定している営業日数
  • 家主居住型・家主不在型の予定
  • 民泊を始めたい時期

特に重要なのは、「どこで」「どの建物を使って」「どのくらい営業したいのか」を具体的に伝えることです。

行政書士への相談については、No.104の「民泊申請で行政書士に依頼するメリット|費用相場と代行業務の内容」でも詳しく解説しています。

自治体の条例は「物件を買う前」に確認する

民泊を事業として考えるなら、ここは特に強調しておきたいところです。

物件を購入してから条例を調べるのではなく、できれば購入・賃借・大規模改修などの前に確認することをおすすめします。

例えば、次のような流れは避けたいところです。

物件を見つける

「観光客が来そう」と購入する

リフォームする

民泊の届出を調べる

自治体条例で営業できる期間が大きく制限されていることが分かる

この順番では、事業計画そのものを見直す必要が出てくる可能性があります。

逆に、

希望する営業日数を決める

候補地域を決める

自治体条例を確認する

物件を探す

管理規約・消防・建築などを確認する

契約・改修・届出を進める

この順番なら、条例による制限を踏まえて物件を選ぶことができます。

まとめ|民泊は「国のルール+自治体条例」で考える

民泊を始めるとき、最初に覚えておきたいのが年間180日というルールです。

しかし、それだけでは十分ではありません。

住宅宿泊事業法では、自治体が条例によって住宅宿泊事業の実施区域や期間などを制限できる仕組みがあります。

そのため、「180日まで営業できる」と考える前に、「自分の物件所在地では何日、どの期間、どの区域で営業できるのか」を確認することが重要です。

特に、これから物件を購入したり、リフォームしたりする場合は、条例の確認を先に行いましょう。

民泊の可否は、住宅宿泊事業法だけで決まるものではありません。

自治体条例、マンション管理規約、賃貸借契約、消防、建築関係などを一つずつ確認して、初めて具体的な営業計画が見えてきます。

分からない場合は、物件の住所と資料をそろえて、自治体や専門家へ事前に相談することが大切です。

著者の一言

今回の記事で一番伝えたいのは、「民泊のルールは全国一律ではない」ということです。

インターネットで民泊について調べると、「年間180日」という数字がよく出てきます。

でも、その数字だけを見て「自分も180日営業できる」と考えると、思わぬところで計画が止まってしまうことがあります。

私なら、民泊を始める場合は、物件を決める前にまず住所を確認し、その自治体の条例を調べます。

少し手間はかかりますが、後から「知らなかった」とならないための大切な準備です。

次回予告

次回は、相談案件No.108「消防設備基準をクリアする!民泊開業に必要な消防法令適合通知書」を取り上げます。

民泊開業で見落とせない消防設備について、消防法令適合通知書とは何か、いつ相談・確認すればよいのかを分かりやすく整理します。

参考にした公的情報

不確実な点

  • 自治体の民泊条例は改正されることがあります。
  • 同じ都道府県内でも、市区町村や地域によって所管やルールが異なる場合があります。
  • この記事では全国の自治体を網羅していないため、実際に民泊を始める場合は物件所在地の最新条例を確認してください。

反対意見・リスク

  • 自治体条例だけ確認しても、民泊営業が可能になるとは限りません。
  • マンションでは管理規約、賃貸物件では賃貸借契約など、別の制約が存在する場合があります。
  • 消防・建築関係の基準についても、物件ごとの確認が必要です。

追加で考慮すべき論点

  • 物件所在地の用途地域
  • マンション管理規約
  • 賃貸人・管理会社の承諾
  • 消防設備と消防法令適合通知書
  • 周辺住民への事前説明
  • 家主居住型・家主不在型の区分
  • 年間の営業可能日数と事業収支