家主居住型と家主不在型の違い|民泊事業者が知るべき要件と注意点

民泊

家主が住んでいるかどうかで、民泊の管理方法は変わります

民泊を始めるとき、意外と重要なのが「家主がその住宅に住んでいるか」という点です。

住宅宿泊事業法では、民泊の運営方法を考えるうえで、家主居住型と家主不在型を区別する必要があります。

家主居住型なら、家主自身が宿泊者への対応や住宅の管理を行います。

一方、家主不在型では、一定の場合に住宅宿泊管理業者への管理委託が必要になります。

「自宅の空いている部屋を貸したい」のか、「使っていない家を民泊にしたい」のか。

この違いによって、必要になる管理体制が変わります。
今回は、家主居住型と家主不在型の違いを、できるだけ簡単に整理します。

相談内容:自宅なら管理業者は必要ない?

相談者:
「自宅の空いている部屋を民泊にしたいと思っています。自分が住んでいるので、管理業者は必要ないですよね?」

行政書士:
「家主が同じ住宅に住んでいる場合は、家主居住型として考えることができます。ただし、単純に『家主が住んでいるから大丈夫』とは限りません。」

相談者:
「どんな点を確認する必要がありますか?」

行政書士:
「住宅の要件や自治体の条例、管理規約などを確認する必要があります。また、宿泊者の衛生・安全確保、宿泊者名簿、苦情への対応など、事業者自身に義務があります。」

相談者:
「では、自宅ではなく、別の家を民泊にする場合はどうでしょう?」

行政書士:
「家主が宿泊中に不在になる形では、住宅宿泊管理業者への委託が必要になるケースがあります。家主がどこに住んでいるかだけでなく、宿泊中に不在になるかが重要です。」

家主居住型と家主不在型の基本的な違い

住宅宿泊事業法では、家主不在型の場合、住宅宿泊管理業者への委託が制度上重要になります。

国土交通省の制度概要でも、家主居住型には住宅宿泊事業者自身が適正な運営措置を行い、家主不在型ではその措置を住宅宿泊管理業者に委託する仕組みが示されています。

項目 家主居住型 家主不在型
家主 住宅に居住 宿泊中に不在となる
宿泊者対応 家主自身が対応する形が基本 管理業者への委託が必要になる場合がある
管理体制 家主自身による管理 住宅宿泊管理業者による管理
確認事項 衛生・安全・苦情対応など 上記に加えて管理委託の確認

ここで注意したいのは、「家主居住型なら何もしなくてよい」という意味ではないことです。

家主居住型でも、住宅宿泊事業者として守るべきルールがあります。

家主居住型とは?

家主が住宅に住みながら民泊を行う形

家主居住型は、簡単に言えば、民泊として利用する住宅に家主自身も居住している形です。

例えば、一戸建て住宅の一部を民泊として使用し、家主も同じ住宅に住んでいるケースです。

この場合、宿泊者が困ったときに家主が対応しやすいというメリットがあります。

また、住宅の状態も日常的に確認できます。

家主居住型でも守るべき義務がある

家主居住型でも、住宅宿泊事業者には、宿泊者の衛生確保、安全確保、宿泊者名簿の備付け、騒音防止などの説明、苦情への対応、標識の掲示などの義務があります。

つまり、
「自宅で民泊をする=自由に貸せる」
ではありません。

民泊として営業する以上、法律上の義務があります。

家主不在型とは?

宿泊中に家主が住宅にいない形

家主不在型は、宿泊者が滞在している間に、住宅宿泊事業者が住宅に不在となる形です。

例えば、東京都内に住んでいる人が、地方に所有している空き家を民泊として運営するケースなどが考えられます。

また、仕事などで家を離れることが多く、宿泊者がいる間に家主が不在になる場合も注意が必要です。

このような場合、住宅宿泊管理業者による管理が必要になるケースがあります。

なぜ管理業者が必要なのか

民泊では、宿泊者が住宅を利用するため、次のような対応が必要になります。

  • 住宅の維持・保全
  • 宿泊者の衛生確保
  • 宿泊者の安全確保
  • 宿泊者名簿に関する対応
  • 騒音などについての説明
  • 近隣からの苦情への対応
  • 緊急時の対応

家主が遠方に住んでいる場合、これらを家主自身が現場で行うことは難しくなります。

そこで、住宅宿泊管理業者に管理を委託する仕組みが設けられています。

住宅宿泊管理業者とは?

住宅宿泊管理業者とは、住宅宿泊事業者から管理業務の委託を受けて、住宅の管理などを行う事業者です。

住宅宿泊管理業を営むには、国土交通大臣の登録が必要です。登録の有効期間は5年で、更新申請が必要です。

そのため、家主不在型で民泊を始める場合は、単に「近所の清掃業者にお願いする」という考え方だけでは足りません。

住宅宿泊管理業者として適切な登録を受けた事業者かどうかを確認することが重要です。

登録業者は検索できる

国土交通省には、住宅宿泊管理業者を検索できるシステムがあります。

国土交通省「住宅宿泊管理業者 検索」

管理を依頼するときは、会社名だけで判断せず、登録状況を確認しましょう。

家主居住型なら管理業者は絶対に不要なのか?

ここは誤解されやすいところです。

家主居住型だからといって、民泊に関するすべての管理を何もしなくてよいわけではありません。

また、住宅宿泊事業法上の「不在」に該当するかどうかは、単純に「同じ住所に住民票があるか」だけで判断するものではありません。

実際の居住状況や、宿泊中の不在状況などを確認する必要があります。

したがって、「住民票があるから家主居住型になる」と自己判断するのは避けた方が安全です。

家主不在型では何を行政書士に相談できる?

家主不在型の場合は、民泊の届出だけでなく、管理体制まで考えておく必要があります。

行政書士へ相談する場合には、次のような点を確認するとよいでしょう。

確認項目 確認する内容
家主の居住状況 宿泊中に不在となるか
管理委託 管理業者への委託が必要か
管理業者 登録を受けた事業者か
自治体条例 営業日・区域などの独自規制
消防 消防法令への適合状況

行政書士に相談するメリットは、これらの手続きを一つずつ整理できることです。

ただし、行政書士が住宅宿泊管理業者そのものを兼ねているとは限りません。

「届出を依頼する行政書士」と「日常の管理を行う住宅宿泊管理業者」は別の役割として考えましょう。

家主居住型・不在型を判断する前に確認したいこと

① どこに住んでいるか

民泊を行う住宅と、家主の生活拠点との関係を確認します。

② 宿泊者がいる間に不在になるか

仕事、旅行、外出などによって宿泊中に不在となる場合は、制度上の扱いを確認する必要があります。

③ 自治体の条例を確認する

住宅宿泊事業は、年間180日という上限があります。さらに、自治体の条例によって営業できる期間や区域などが制限される場合があります。

そのため、全国共通のルールだけを確認して「この方法なら営業できる」と判断するのは危険です。

④ 消防関係を確認する

観光庁は、住宅宿泊事業を開始する際には消防法令を遵守する必要があり、届出前に管轄の消防署などへ相談するよう案内しています。

家主居住型か不在型かだけでなく、住宅そのものの条件によって必要な対応が変わる場合があります。

家主居住型と家主不在型の判断フロー

民泊をする住宅に家主が住んでいる?

宿泊中も家主が居住・対応できる?

はい → 家主居住型として確認

いいえ → 家主不在型として管理委託を確認

自治体条例・管理規約・消防関係を確認

このフローは基本的な考え方を整理したものです。

実際の判断では、物件の状況や自治体のルールを確認してください。

家主不在型は「管理費」も事業計画に入れる

家主不在型を選ぶ場合、管理業務を外部に委託することで、その分の費用が発生します。

したがって、民泊の収支を考えるときには、宿泊料金だけを見るのでは不十分です。

例えば、次のような費用を考える必要があります。
  • 住宅宿泊管理業者への委託費
  • 清掃費
  • 設備・備品費
  • 消防関係の対応費用
  • 光熱費
  • 修繕費
  • 予約サイト等に関係する費用

特に遠隔地の物件では、管理業務の負担が大きくなります。

「空き家だから民泊にすれば簡単に収益化できる」と考えず、管理費を含めた収支計画を作ることが重要です。

家主居住型・不在型のメリットと注意点

タイプ メリット 注意点
家主居住型 宿泊者への対応をしやすい 生活空間と民泊の区別が必要
家主不在型 空き家などを活用しやすい 管理業者への委託などを考える必要がある

どちらが優れているというものではありません。

自宅の一部を活用するのか、空き家を活用するのかなど、物件と運営方法に合わせて考える必要があります。

民泊を始めるなら「管理方法」を先に決める

民泊というと、宿泊料金や予約サイトばかりを考えてしまいがちです。

しかし、実際に運営を始めるなら、まず「誰が管理するのか」を決めることが重要です。

家主居住型なら、自分自身で対応できるのかを考えます。

家主不在型なら、住宅宿泊管理業者への委託が必要になるかを確認します。

そのうえで、管理規約、自治体条例、消防関係などを確認します。

この順番で考えると、民泊開業に必要な準備が見えやすくなります。

まとめ:家主の「居住」と「不在」は民泊運営の重要ポイント

家主居住型と家主不在型の違いは、単に「家主が同じ住所にいるか」という話ではありません。

重要なのは、宿泊者がいる間に家主が住宅にいて、必要な管理・対応ができるかという点です。

家主居住型でも、衛生、安全、名簿、騒音、苦情対応などの義務があります。

家主不在型では、住宅宿泊管理業者への委託が必要になるため、管理体制と費用をあらかじめ考えておく必要があります。

そして、どちらの場合でも、自治体の条例や消防関係、マンションの管理規約などを確認することが大切です。

民泊を始める前に、「この物件を誰が、どのように管理するのか」を決めておきましょう。

著者の一言

今回調べていて、民泊は「部屋を貸すだけの事業」ではないと改めて感じました。

特に家主不在型では、宿泊者が困ったときに誰が対応するのかを最初に決めておく必要があります。

民泊を始めたいと思ったら、いきなり届出書を書くのではなく、まず「家主居住型なのか、不在型なのか」を整理してください。

そのうえで、必要な手続きを一つずつ確認していく方が、後から慌てずに済みます。

次回予告

次回は、相談案件No.106「年間180日制限を回避する方法はある?民泊新法の営業上限対策」を取り上げます。

住宅宿泊事業には年間180日の営業日数上限があります。

では、180日を超えて営業したい場合、どのような選択肢があるのでしょうか。

「180日制限を回避する」という言葉だけで判断せず、住宅宿泊事業法と旅館業法などの違いを含めて、合法的な選択肢を整理します。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

内部リンク・外部リンク

内部リンク①:
「民泊申請で行政書士に依頼するメリット|
内部リンク②:
「マンションでの民泊運営は可能?管理規約の確認と変更のポイント」
次回内部リンク:
「年間180日制限を回避する方法はある?民泊新法の営業上限対策」